部下やメンバーに何か新しいことにチャレンジさせる。そんな時ありますよね。
今回は、そんな一幕をお話しします。実際にあった話です。
クライアントから承諾を得た旨、ここに記載致します。
~とある日~
「メンバーのAさんを成長させたくて、はじめてプロジェクトを任せることにしました。」
とクライアントからメール連絡がありました。
私は、それを見た瞬間に「これは、まずい」と感じ、すぐさま返信。
「Aさんに、どのようにお話しされたのですか?」
返事もすぐに返ってきました。
「俺は何も口を出さないから、全て自分で考えてやってみろ。と伝えました。」
と。
やっぱり、、、これではまずいことになります。
これは、「全てお前に任せる」という言葉を使ってしまえば、カッコいいように聞こえるかもしれません。
しかし、これは極端な言い方をすれば、「任せた」のではなく、「放棄した」に近いでしょう。
既にいくつものプロジェクトを立案から実行まで、途中で起こるトラブルをも解決しながら無事に完了させた経験がある部下やメンバーであれば、このコミュニケーションで大丈夫かもしれません。
しかし、はじめてプロジェクトを企画する人が「お前に全て任せる」と言われたところで、一体何ができるでしょうか。
例えるならば、
初めて連れていかれた土地で、到着するなり、「あとはお前に任せる。好きにしていい。」と言われたようなもの。
ここには一体何があるの?ここはどこ?
どういう土地なの?地図は?
交通手段は?お金はいくら使っていいの?
いつまで自由なの?泊っていいの?
あなたならどうしますか? 今の時代、スマホで地図アプリを開けば、自分の居場所はわかります。そして、検索すれば近くの名所、名店、そこへの交通手段もすぐにわかります。
では、これをビジネスに置き換えてみたらどうでしょうか。
「任せた」と言われても何から手を付けていいのかわからない。そもそも何をすべきなのかがわからない。
そんなメンバーがほとんどだと思います。
「わからなければ、何でも自分で調べて苦労するもんだ!」と言いたくなる気持ちもよくわかります。
しかし、メンバーは、残念ながら起業家ではありせん。みんながみんな、パイオニアではないと考えるのが妥当でしょう。
先ほどの例で言えば、「スマホ」の機能をリーダーが果たさなくてはいけない。
「何が」「どこにある」のかをあらかじめ、明確に教えてあげる必要があります。
「どこに行くのか」「どのようなプランでどのような交通手段で行くのか」などは、もちろんAさんが考えるべきです。それがプロジェクト。
リーダーは、「何が」「どこにあるのか」「どのように調べたらいいのか」をまずは教えてあげることです。
そして、それを理解することでAさんは、はじめて倉庫や書庫、パソコンの中で眠っているであろう過去の優れた作品を見つけることができるはずです。いわゆるファイルリストですね。
社外であっても然り、本屋の書籍、WEB上での正しい情報の取り方、見分け方、役に立つサイト情報など。
そして、そのような過去の優れた作品を大いに真似てOKだということも教えてあげましょう。
そのまま、完全コピーしてくるかもしれないという懸念があるのであれば、のちに提出されたプロジェクト起案書をしっかりとチャックするのがリーダーの仕事でしょう。単純にコピー転用したものであれば、どこかが不自然になっているはずです。当プロジェクトには関係のない用語が書かれていたり、つじつまが合わないものになっていたり、関係のない商品名が入っていたり、日付が過去のものであったり、などなど。
今の時代、本当に全く新しい物を生み出す、考えだすということはかなり難しいと思います。ましてや、はじめてプロジェクトを担当するメンバーができるわけもありません。
数あるファイルリストの中から、似たようなテーマのファイルを見つけ出し、そのフォーマットを活用したり、考え方を借用したりするのです。
そして、最新のデータをインプットし、自分の知恵を付け加えていき、自分の起案書が完成していくんですね。
すべて独力で考える人の半分の時間で完成するはずです。もちろん、早さだけでなく、出来がいいに決まっています。
自分の出す知恵などたかが知れています。先輩方の優れた作品をよく読み、その優れた部分から多くを学んで応用したらいいんです。
「学ぶ」より「真似る」ことを教えること。
その前に「真似る」ものの在り処を示してあげること。聞かれたら丁寧に教えること。
それが出来て、はじめて「お前に全て任せる」と言えるのですね。